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上顎の奥歯を失い、噛みにくさが続いた症例に対するインプラント治療(ソケットリフト併用)
今回は、上顎の奥歯を抜歯後、一定期間の治癒を経て「もう一度しっかり噛みたい」と来院された症例をご紹介します。
通院のしやすさも重視しながら、骨量が不足する部位には骨造成術を併用し、機能回復と長期安定を目指して治療を行いました。
来院の経緯
患者様は1年前に奥歯を抜歯され、前医で「治癒のため一定期間待ってからインプラントを検討する」と説明を受けておられました。
1年が経過し治療再開を希望されたものの、京都市内への通院が遠方で負担が大きいことから、当院へご相談に来られました。
初診時の評価
欠損部位は右上の奥歯でした。
右上は、上顎洞(副鼻腔)までの距離が近く、残存骨量が不足しており、通常の埋入のみでは十分な初期固定が得にくい状態でした。
初診時の口腔内写真(治療前)
上顎臼歯部の欠損により咀嚼効率が低下し、対合歯・隣在歯への負担増加が懸念される状態でした。

治療前(欠損部の状態)
術前レントゲン・CT評価
右上欠損部では上顎洞底までの距離が短く、埋入に必要な垂直的骨量が限られていました。
安全性と長期安定性を確保するため、骨条件に合わせた術式選択が必要と判断しました。

治療方針
右上の欠損に対してインプラント治療を計画しました。
右上は骨量不足を補うため、ソケットリフト(上顎洞底挙上術)を併用。
骨の状態の確認後、適切な埋入ポジションを設定して治療を進めました。
治療の流れ
① インプラント埋入(右上はソケットリフト併用)
術前シミュレーションに基づき、埋入角度・深度・補綴スペースを考慮して手術を実施しました。
右上ではソケットリフトを併用し、上顎洞側へ十分な骨高径を確保したうえで埋入を行っています。

埋入直後(ソケットリフト併用)
② 治癒期間(骨結合の安定化)
インプラント体と骨が結合する期間を十分に確保し、軟組織の治癒状態も確認しながら経過観察を行いました。
部位ごとの負荷条件に応じて、最終補綴へ進む時期を調整しています。
③ 最終補綴(セラミッククラウン装着)
咬合バランスを整えながらセラミッククラウンを装着し、審美性と咀嚼機能を回復しました。
清掃性にも配慮した形態とし、長期的なメンテナンスが行いやすい設計としています。

最終補綴装着後(安定した咬合へ)
術前後の比較

治療前 → 補綴装着後
治療の詳細
| 年齢・性別 | 70代・男性 |
|---|---|
| 主訴 | 上顎奥歯で噛みにくい/インプラントで治したい |
| 来院理由 | 抜歯後1年経過し治療希望。京都市内までの通院が遠方のため当院を受診 |
| 診断 | 右上大臼歯欠損、上顎洞近接を伴う骨量不足 |
| 治療内容 | 上顎臼歯部インプラント埋入(ソケットリフト併用)、セラミック補綴 |
| 治療期間 | 約3〜5ヶ月(約5ヶ月:骨結合の経過により調整) |
| 治療費用 | 1本約50万円(税別)※部位・本数・骨造成の有無で変動 |
| リスク・副作用 |
・術後の腫れ、痛み、内出血が生じることがあります。 ・上顎洞に近接する部位では、解剖学的条件に応じた追加処置が必要になる場合があります。 ・清掃不良や喫煙、咬合負荷などによりインプラント周囲炎のリスクがあります。 ・長期安定のため、定期的なメンテナンスと咬合管理が重要です。 |
当院より
上顎の奥歯が欠損した状態を放置すると、咀嚼効率の低下だけでなく、他部位への過負荷や咬合バランスの乱れにつながることがあります。
本症例では、右上の骨量不足に対してソケットリフトを適切に併用し、欠損部を機能的に回復しました。
その結果、しっかり噛める感覚の改善・清掃性の確保・長期安定を見据えた補綴設計が可能となりました。
「抜歯後そのままになっている」「遠方通院が負担で治療をためらっている」という方も、まずは現在の骨の状態を確認することから始めましょう。
著者情報
院長 早川 倫正

- 関西大倉高等学校 卒業
- 大阪歯科大学 歯学部 卒業
- 公立甲賀病院 歯科口腔外科 勤務
- 医療法人 スマイルデザイン 吉田歯科・矯正歯科 入職
- 医療法人 スマイルデザイン 吉田歯科・矯正歯科 副院長就任
- 医療法人 スマイルデザイン 吉田歯科・矯正歯科 院長就任
- はやかわ歯科小児矯正歯科 開院


